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2011年3月31日木曜日

東北東日本大地震と特別損失とIFRS

IFRSでは日本基準や、米国会計基準と異なり特別損失がありません。
日本基準でいうところの減損損失や、固定資産売却損益等はIFRSでは営業損益に含まれることになります。

昨日日本公認会計士協会から、今回の大地震を受けた今年度決算の監査上の留意事項が会長通牒として発行されました。全国の経理マン、監査人必見の通達となっております。


会長通牒「東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応について」及び「東北地方太平洋沖地震による災害に関する学校法人監査の対応について」の公表についてhttp://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/files/kaichou-tuucho-1-20110330.pdf


内容は、今回の震災で滅失した棚卸資産や固定資産や債権放棄、義援金等々を特別損失として処理せよ、との通知。また、監査実務においては震災の影響について一定の配慮をせよとのこと。
減損の兆候や有価証券の減損、繰延税金資産の回収可能性等の間接的に生じる損失についても記載がされています。

また、一連の特別損失を災害損失という勘定で計上し内訳を重要性の高いものは開示するという方法も認められています。


IFRSでは前述のとおり、特別損失のラインは認められませんが、特別な勘定科目をもうけることができます。

よって、日本基準同様、「災害損失」という科目をもうけて、地震関連の費用をこの勘定科目に持っていくことが可能になると考えられます。

この点については、日本電波工業やHOYA、NGC、住友商事がどのような開示を行うか要チェックですね。


※上記は個人的な見解です。

2011年3月30日水曜日

IFRS適用で為替換算調整勘定(TA)がゼロに?利益剰余金がなくなっっちゃう。。

日本基準からIFRSに移行する場合においては、開始貸借対照表を作成する際に、為替換算調整勘定を0にして、利益剰余金とオフセットする必要があります。(IFRS1号参照)

海外に古くから現地法人や事業会社を持っている会社は特に、1ドル360円時代から投資をしている場合も多いので、為替換算調整勘定が大きくマイナスになっている会社も多いはず。

この相殺の初度適用の処理によって、そのような会社の利益剰余金が大きく減少することが予想されます。

もちろん、配当性向は基本的には日本基準の会社法をベースに考慮されるので、IFRS上の利益剰余金の金額は影響ありませんが、会見基準が違うと言えど、利益剰余金がマイナスにもかかわらず、配当することには違和感があり、配当政策に少なからず影響を与える場合があります。

多くの企業がこの問題で頭を痛めているなか、あざ笑うかのように
先日IFRS開始貸借対照表を公表した「日本板硝子」では工夫のこらした面白い開示がされていました。

日本板硝子では為替換算調整勘定のマイナス金額が利益剰余金の金額を超えているため、IFRSの規定をそのまま読んで対応すると利益剰余金はマイナスになってしまいます。

その印象を緩和するために(個人的な予想ですが)日本板硝子では為替換算調整勘定と相殺される利益剰余金を「別勘定」で開示することで、相殺の影響を除いた利益剰余金を引き続き、開示しています。通常の利益剰余金をプラスで維持しています(維持しているように見えます。)。


利益剰余金                     ○○○
利益剰余金(IFRS移行に伴う為替換算調整勘定振替) −○○○


http://www.nsg.co.jp/ir/library/pdf/20110225.pdf

IFRSでは日本基準とは違いBSやPLの必要項目、構成要素を細かく定めていないので、財務諸表の利用者の利便性を高めるという視点で、会社がある程度裁量をもって勘定科目を決定できます。

それをうまく利用した機転の利いた開示だと思います。

上記はあくまで、IR資料での開示ですので、実際の有価証券報告書(2011年6月の四半期報告書が一番はじめの開示)にて同様にこのような表現がなされ、監査法人のサインがされるかどうかが注目になります。

これが認められれば、TAが大きくマイナスの企業にとっては、これと同様の手法で初度適用する実務が日本で広がる可能性がありますね。


※上記は個人的な見解です。

2011年3月29日火曜日

IFRS9号複合金融商品 ASBJ金融負債論点の整理

会計基準の中では特に複雑なのが、この複合金融商品の区分処理。
現在以下で日本基準の論点整理が発表され、コメントが募集されています。


https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/summary_issue/kinsho-kentojokyo_2011/


そもそも複合金融商品ってなんだってところからなんだが、
とりあえず、一般事業会社にはそんなに存在せず、この基準がトピックになるのは特定の金融機関に限定されます。


複合金融商品は現行の日本基準では


次のすべての要件を満たす場合
 組込デリバティブのリスクが現物の金融商品に及ぶ可能性があること
 組込デリバティブと同一条件の独立したデリバティブが、デリバティブの特徴を満たすこと
 複合金融商品について、公正価値の変動による評価差額が当期の損益に反映されないこと




この場合に区分処理が行われますが、コレ以外の場合にも上記要件を満たさない場合が、
管理上、組込デリバティブを区分している場合には区分処理の選択が可能です。


一方IFRS9号(2011年3月28日現在)では


次のすべての要件が複合商品に組み込まれたデリバティブを区分処理する要件です。
組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、主契約の経済的性格及びリスクに密接に関連していないこと
 組込デリバティブと同一条件の独立の金融商品がある場合、それがデリバティブの定義に該当すること
 複合商品が、公正価値で測定して公正価値変動を純利益に認識するものではないこと





複合商品の事例としては以下があげられています。
これについは、上記下線の組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、主契約の経済的性格及びリスクに密接に関連している場合とそうではない場合に分けて事例を記載しています。


組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、主契約の経済的性格及びリスクに密接に関連しているものとはみなされない場合の例を次に示す。これらの事例に該当するとともに、他の要件に該当している場合、組込デリバティブは、主契約と区分して処理する。なお、これらの例は網羅的なものではない。
(1) 負債商品に組み込まれたプット・オプションのうち、株価や商品価格又は指数に応じて価値が変動する資産と交換で、保有者が商品を買い戻すことを可能にするもの


(2) 負債商品の満期まで残存期間を延長することを可能にするオプション、又は、残存期間を自動的に延長させる条項(ただし、延長にあたって、当該時点における市場金利に近似する利率への修正が行われる場合を除く。)


(3) 負債商品に組み込まれた株価連動型の金利又は元本の支払


(4) 負債商品に組み込まれた商品価格連動型の金利又は元本の支払


(5) 負債契約に組み込まれたコール、プット、又は期限前償還オプション(ただし、次のいずれかに該当する場合を除く。)
① オプションの行使価格が、各行使日において、組込対象である負債商品の償却原価にほぼ等しい場合
② 期限前償還オプションの行使価格が、主契約の残存期間に係る機会金利の現在価値にほぼ等しい金額を貸手に補填するようにされている場合
(6) 負債商品に組み込まれたクレジット・デリバティブで、特定の参照資産の信用
リスクを他者に移転することを可能にするもの


組込デリバティブの経済的性格及びリスクが、主契約の経済的性格及びリスクに密
接に関連しているものとみなされる場合の例を次に示す。これらの事例に該当する場
合、組込デリバティブは、主契約と区分して処理しない。なお、これらの例は網羅的
なものではない。


(1) 基礎数値が金利又は金利指数である組込デリバティブのうち、主契約である利付負債契約に関連して授受される金利の額を変更させる可能性のあるもの(ただし、複合商品の保有者が投資のほとんどすべてを回収する方法で決済することができない場合、又は、組込デリバティブによって、複合商品の保有者による当初の収益率が少なくとも2 倍以上になりうるとともに、主契約と同条件の契約の市場金利と比較して少なくとも2 倍以上の収益率となりうる場合を除く。)


(2) 負債契約に組み込まれたフロアー又はキャップのうち、契約の発行時におけるキャップ利率が市場金利以上、あるいは、フロアー利率が市場金利以下であり、かつ、主契約との関係でレバレッジがかけられていないもの


(3) 資産(例えば、商品)の売買契約に含まれている当該資産の売買価格にキャップ又はフロアーを設ける条項のうち、当初時点でアウト・オブ・ザ・マネーの状態にあり、レバレッジかかけられていないもの


(4) 負債契約に組み込まれた外貨デリバティブのうち、外貨表示による元本又は金利の支払を行うことにするもの(例えば、デュアル・カレンシー債)


(5) 金融商品以外の主契約(例えば、非金融商品に関する外貨建の売買契約)に組み込まれた外貨デリバティブのうち、レバレッジがかけられておらず、オプションの性質を有するものでなく、かつ、次のいずれかの通貨による支払が求められるもの
① 主な契約当事者にとっての機能通貨
② 世界の商取引において関連する商品又はサービスが獲得又は提供される際に、通常用いられる通貨
③ 取引が行われる経済環境において、非金融資産を売買する契約で通常用いられる通貨(例えば、地域の商取引において通常用いられる、比較的安定的で流動性の高い通貨)
(6) 金利のみ又は元本のみの契約に組み込まれている期限前償還オプションのうち、主契約が次の双方の条件を満たすもの
① 金融商品の契約上のキャッシュ・フローを受け取る権利から区分したことにより生じたものであること(ただし、当該権利に組込デリバティブが含まれていた場合を除く。)
② もともとの主契約である負債商品になかった条件を含んでいないこと


(7) リース契約に組み込まれたデリバティブのうち、次のいずれかに該当するもの
① リース料支払額を消費者物価指数に連動させるようなインフレ関連指数
(ただし、リース契約にレバレッジがかけられておらず、かつ、当該インフレ関連指数が企業の経済環境におけるインフレに関する場合に限る。)
② 関連する販売に応じて、賃借料を変化させるもの
③ 変動金利に応じて、賃借料を変化させるもの


(8) 金融商品に組み込まれたユニット・リンク型の特徴のうち、投資ファンドからのユニット毎の支払がユニットの価値(ファンド資産の公正価値を反映するもの)
に基づいてなされるもの

2011年3月21日月曜日

資産除去債務の割引率 日本基準 米国基準 IFRS

資産除去債務の割引率は日本基準とIFRSとUSGAAPでそれぞれ異なるので、非常にややこしいです。

日本基準の場合は会社特有のリスクを反映させない無リスク利子率(国債)を使用

米国基準とIFRSは会社特有のレートを無リスク利子率に上乗せします。(プレミアム)

また、日本基準と米国会計基準は資産除去債務計上時のレートを使い続けますが、
IFRSでは常に期末のレートを使用する必要があります。

日本では最近できた基準の割に、こうしてギャップがあるのは非常にややこしいですよね。

2011年3月17日木曜日

IAS 27号 決算日統一 その4

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IFRS適用に備えて、海外子会社(もしくは国内子会社)の決算期を親会社とそろえる場合は、
「決算期変更」という方法と「仮決算」という方法がありますが(詳細はアーカイブ 決算日統一その1を参照)、

今回は法定決算を変更できるにもかかわらず、決算期変更ではなく、「仮決算」で対応するケースについて紹介します。

1.税務上のメリット
法定決算期を変更することで、税務ポジションによっては税務上デメリットを受ける場合があります。
例えば、繰り越し欠損に期限がある場合で、決算期を12月から3月に変更した際、その3ヶ月間の決算を「1期」ととらえられ、欠損の有効期限が9ヶ月短くなるケースが考えられます。
キャッシュフローに影響が出るので、税務上の影響は慎重に判断する必要があります。

2.決算早期化に不安のある会社
決算早期化に不安がある会社は、親会社の決算報告期日に決算書を間に合わせられても、その「精度」に不安が出てきます。
適当に決算をされて、後々エラーが続出してしまっては大変です。
そのため、法定の決算期は変えずに12月のままにして、法定監査を事前に受けることで、精度が上がります。
ただ、親会社の監査人が、日本の親会社用3月仮決算に対して、追加で監査を求めるほど重要な子会社であれば、監査コストが法定決算と親会社決算の二重でかかるため、留意が必要です。

3.法律以外の理由で決算期を変更できない会社
例えば、12月でないとできない年次決算プロセスがある場合もしくは、ビジネス効率に著しい悪影響がある場合には仮決算を選択する場合が考えられます。


以上、IFRSでは親会社と子会社の決算期の変更について「仮決算(consolidation purpose provisional closing)」
を認めていますので、子会社の状況に応じた変更を選択する必要があります。

法定決算期を変更することは監査コスト等の2重コストおよび帳簿の2重管理が不要の点でメリットがありますが、上記のケースの場合には、まずは「仮決算」で対応し、時間が経過し、問題が解決してから改めて決算期を変更するというのも一つの方法です。










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2011年3月15日火曜日

IAS 27号 決算日統一 その3




決算日統一 その3

決算日統一においては、「法定決算期変更」、「仮決算」という方法がありますが、どちらの手法をとった場合においても、決算業務の早期化、すなわち「決算早期化」が必要になります。

日本基準や米国会計基準では親会社と子会社の決算期のズレが最大3ヶ月認められますが、
IFRSでは、実務上不可能な場合を除き、決算期のズレは原則認めず、やむを得ない場合は注記するという規定があります。

よって、日本の企業で親会社が3月主要な海外子会社が12月決算会社の場合には海外子会社の決算早期化を行う必要があります。

「決算早期化」にあたっては経理部以外にも営業部をはじめとするその他の部門の協力/理解が不可欠です。

全社的な協力を仰ぐためには、決算早期化が必要になった背景/必要性をわかりやすく説明する必要があり、全社的な社員啓蒙が必要になります。

下記は研修資料を作成する上で、非常に簡潔でわかりやすく、重宝しました。
研修について、外部委託ではなく、内部で考えている担当者はぜひご参考ください。

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2011年3月14日月曜日

IAS 27号 決算日統一 その2



決算日統一その2

決算日をIFRSに備えて親会社と子会社で統一する方法は前回のブログで記載した通り、4つあります。

そのうちの一つが「仮決算」です。

仮決算は法定の決算とは異なるので、会社法に基づいて株主総会に提出する必要もなければ、監査する必要もなく、それに基づいて納税する義務もありません。
仮決算はあくまで親会社の連結決算を目的とするためだけに行う決算であるため、決算日統一にあたっては特に現地の監査報告書を作成する必要はありません。

この手法は、国の制度で法定決算期の変更が認められていない国や、税務上の繰越欠損金の関係で決算期を法的には変更できない場合に採用するケースが多いです。

例えば、中国やロシアがこれに該当します。

次回も決算期統一のIFRS対応について説明します。









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2011年3月13日日曜日

IAS 27号 決算日統一 その1

IFRSを適用する以前に、在外子会社の決算期が親会社と揃っていない場合があります。

IFRSではIAS27号の要請により、親会社とその子会社の決算日の統一が求められています。
よって親会社の決算期が3月で在外子会社の決算期が12月の場合には留意が必要です。

決算日統一実現方法には以下の4つの方法があります。

1.子会社の法定決算期を変更する。
2.子会社の法定決算期を変更せずに親会社報告用の仮決算を実施する。
3.3か月以内の重要な取引について調整し、決算日の統一が実務上不可能(Impracticable)といういうことを注記する。
4.重要性が低いため、何もしない。

決算日変更を円滑に進めるには、いかに4.の会社を増やし、そのことについて監査法人と事前に協議し、合意していくことがポイントだと考えられます。

次回からは1.~4.についてそれぞれ解説していきます。

次回 「決算日統一プロジェクト その2」