海外に古くから現地法人や事業会社を持っている会社は特に、1ドル360円時代から投資をしている場合も多いので、為替換算調整勘定が大きくマイナスになっている会社も多いはず。
この相殺の初度適用の処理によって、そのような会社の利益剰余金が大きく減少することが予想されます。
もちろん、配当性向は基本的には日本基準の会社法をベースに考慮されるので、IFRS上の利益剰余金の金額は影響ありませんが、会見基準が違うと言えど、利益剰余金がマイナスにもかかわらず、配当することには違和感があり、配当政策に少なからず影響を与える場合があります。
多くの企業がこの問題で頭を痛めているなか、あざ笑うかのように
先日IFRS開始貸借対照表を公表した「日本板硝子」では工夫のこらした面白い開示がされていました。
日本板硝子では為替換算調整勘定のマイナス金額が利益剰余金の金額を超えているため、IFRSの規定をそのまま読んで対応すると利益剰余金はマイナスになってしまいます。
その印象を緩和するために(個人的な予想ですが)日本板硝子では為替換算調整勘定と相殺される利益剰余金を「別勘定」で開示することで、相殺の影響を除いた利益剰余金を引き続き、開示しています。通常の利益剰余金をプラスで維持しています(維持しているように見えます。)。
利益剰余金 ○○○
利益剰余金(IFRS移行に伴う為替換算調整勘定振替) −○○○
http://www.nsg.co.jp/ir/library/pdf/20110225.pdf
IFRSでは日本基準とは違いBSやPLの必要項目、構成要素を細かく定めていないので、財務諸表の利用者の利便性を高めるという視点で、会社がある程度裁量をもって勘定科目を決定できます。
それをうまく利用した機転の利いた開示だと思います。
上記はあくまで、IR資料での開示ですので、実際の有価証券報告書(2011年6月の四半期報告書が一番はじめの開示)にて同様にこのような表現がなされ、監査法人のサインがされるかどうかが注目になります。
これが認められれば、TAが大きくマイナスの企業にとっては、これと同様の手法で初度適用する実務が日本で広がる可能性がありますね。
※上記は個人的な見解です。
TAをゼロにすることはMUSTではなく、できる規定と理解しています。
返信削除TAをゼロにする場合にREとオフセットするというのが、理解できません。
Historical rateとAdoption時のrateの差をゼロとするためには、一旦、在外子会社の資産負債をHistorical rateで評価する。同日に時価評価し、差額は過年度の損益ということで、REとする。 という理屈でしょうか?
おっしゃる通り、できる規定になっていますが、TAをオフセットしない場合は外貨換算の会計処理を遡及する必要があるため、海外法人設立第1号からさかのぼるのはimpracticableですので大多数の企業はこちらを選択せざるを得ません。
返信削除欧州では調査した約150社のうちすべてがこの方法で初度適用しているようです。
そういった意味で個人的にはマストという認識でいます(会社によって異なるでしょうが)。
コメントの通りIFRS1号の中では、REと相殺することは明示されていませんが、実務上REと相殺しています。
遡及免除規定のため、実務>理論で、理論的にどうこうというのはないかと思いますが、推定するにコメントに記載いただいたような理屈がIASBにおいても考えられたのではないかと予想します。Basis for Conclusionにそういった記載はないのであくまで個人的見解ですが。
確かに外貨換算の会計処理の遡及適用は無理ですね。
返信削除先週からIFRSを真面目に考えなきゃいけないと思い、
HOYAさんの適用初年度のFSを読んでいたところ、
TAを何とオフセットしているのか分からなかったので、
Ningyo Houseさんのブログが大変勉強になりました。
「How to」本に惑わされることなく、実務に学んでいきたいと思っています。